企業研究物語: ⑱唯のその後
2014/12/29
数ヶ月後、唯から連絡があり、安室からのアドバイスを基に、希望通りの会社から内定をもらったとの報告があった。
有価証券報告書を調べることで、自分が就きたい仕事をメインで扱っていて、早く裁量権が与えられる会社が見つかったとのことだ。
「事業の内容」、「役員の状況」や「対処すべき課題」をしっかりチェックしたので、面接対策もばっちりだったと話していた。
僕も、安室のアドバイスを受けて、就職活動を再開している。ヨクブーでどの様な点数をつけようか迷っていた僕だったが、やはり、自分がやりたい仕事と裁量権が与えられる事に5点を付け、残りは1点を付けた。つまり、唯と同じヨクブー点数構成になったのだ。
今は、文房具デザイン会社ベンチャーの最終面接の結果待ちだ。この会社は「これまでなかった文房具の開発」をテーマに、企画やデザインを本社で考えて、中国へ製造をアウトソーシングしている。社長も30代と若く、頑張って実績を出せば、早いうちに取締役になることだってできる。
これまで、数多くの愛する文房具を収集しながら、利便性やデザインを比較してきた僕が、その強みを一番に発揮できる会社だと思っている。
スマホがブルっと震えた。
面接結果のメールかと思い、あわてて画面を見ると、安室からのLINEが届いていた。
サムライ企業研究を就職活動生に教え続けている安室から、体験談を他の就職活動生に語って欲しいので、今から喫茶Decay Girlに来いという内容だった。
あれからというもの、安室は何故か、喫茶Decay Girlを自分の講義場所として利用しているらしい。その度に、新たな受講生の度胆を抜いていることも、唯から聞いていた。
自分はまだ、内定をもらえたわけではないので、喫茶Decay Girlには行けない旨をLINEで安室に返信した。
しばらくして、再び、スマホがブルっと震えた。
安室から、素早い返信が来たと思い、苛立ちながらスマホを取り上げた。
そこに表示されていたのは、安室からのLINEではなく、文房具開発ベンチャー採用担当者からの新着メールだった。
短い文章だったが、文房具メーカーへの内定が確定した旨が記載されていた。
これまで希望の会社に内定をもらった時の気持ちはどんなに嬉しいものかと、何度も想像していた。きっと、身体全身が震える程、嬉しいに違いない。。。。そう、思っていた。
しかし、現実はそうではなかった。感動するというよりも、自分がこれまで実施してきた事への納得感と、長かった就職活動がやっと終わる事への安堵感に全身が包まれるといった方が正しかった。
しばらくたって、不安になり、本当に内定を貰えたかどうか、再度、メールを確認した。
何度読んでも、内定が確定した旨がしっかりと記載されている。
その後、唯と安室に内定が確定した旨のLINEを送った。2人からすぐに「おめでとう」の返事が届いた。安室にいたっては内定をもらったのだから、すぐに喫茶Decay Girlに来いと、しつこい。
僕はそれを無視し、一息ついて唯にLINEを送った。
僕:内定を貰えたから、約束通り、付き合ってくれるよね?
5秒後に唯から返信が来た
唯:約束したから、そうする!
ハートのスタンプ付きだった。
その返事に僕は嬉しくなり、初デートを申し込んだ。
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