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企業研究物語: ②怪しいサイト 後編

      2014/12/18

「もし、あなたが就職活動について、悩んでいるとしたら私も同じ経験をしているわ。私が就職活動をしていた15年前も今と同じ位就職難だったもの。なんとか、有名企業に入ろうとしてずいぶん頑張ったのよ。高校受験や大学受験の時の様に、努力すれば有名校に入れると思っていたわ。でも、努力が結果に結びつかなかった。可愛い子は努力しなくても、どんどん就職をきめていく。そんな状況をみて、世の中不公平だと思ったものよ。学生の頃から勉強して頑張ってきたのに、結局最期は容姿で決まってしまうのね。当時はそう思ったわ。でも、仕事上、多くの会社を見てきた今となって、15年前の就職活動の進め方は誤っていたとわかったの。タイムマシーンがあったら、昔の自分に言ってやりたいわね。だから今、こうして就職活動生に講義をしているのよ。」

 

安室自身の体験談に、僕はつい引き込まれた。

就職氷河期を知らない親や親戚は「努力が足りない」だったり「アピールが足りない」といった精神面のアドバイスしかない。

自分でいうのもなんだが、僕は他の学生より真面目に就職活動に取り組んだ方だと思う。

しかし、その甲斐むなしく、去年は1社からも内定をもらうことができなかったのだ。

安室は更に続けて、

 

「この活動の直接のきっかけになったのは、私の友人のベンチャー企業社長の一言だったの。その社長も就職活動ではとても苦労したらしく、自分の希望した会社に入れなかったのね。それならばいっそ、自分で会社を作ってしまおうと思い立って起業した人よ。今では上場会社の社長。一時期は経営難になったこともあったけど、ここ数年は増収増益でメディアからも注目されているわ。」

 

就職活動に失敗したから、自分で会社を立ち上げるなんて、僕には想像すらした事がなかった。

就職活動がうまくいかないのは、自分が社会的欠落者であるためだと、どこか決めつけてしまっている自分がいた。

安室は椅子から立ち上がり、部屋の中央に座っていた自分の周りをぐるぐる歩きながら話を続けている。

 

「社長は学生を採用する際に、学生が会社の事を全然理解していないことに対してとても不満を感じているの。上場している会社だし、会社情報はこれでもかと開示しているのに、学生のほとんどはそれを知らずに面接に来ると言っていたわ。そこで、私は就職活動生に会社情報の入手方法と、それをどう就職活動に役立てるかを教えて行こうと思ったの。私は普段、公認会計士として、企業が開示する情報をチェックする監査という職業についているから、企業がどんな情報を開示しているかや、それがどのように作られているかをよく知っているのよ。」

 

話によると、会計のプロである安室が自分ために企業研究の講義をしてくれるということらしい。

突然やって来て、変な商品を売りつけられやしないかと警戒していた僕の心は次第に溶けていった。

 

「この度は、ご応募頂きありがとうございます。」

 

安室はそういうと、再度、深々と僕の前でおじきした。

 

「申し遅れましたが、石川遼太です。本日はよろしくお願いします。」

 

僕も安室と向かい合って、丁寧におじきをした。

こうして、安室の講義は始まった。

 - 企業研究物語

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