企業研究物語: ②怪しいサイト 前篇
2014/12/18
記憶が徐々に蘇ってきた。
さかのぼること一週間前、僕はいつものごとく、就職活動情報をネットで検索していた。
その中で「必殺、あなたのための会社選び請負人!」と題したなんとも怪しげなサイトにいきあたった。
サイトを上から流して見ていると、「会社選びの家庭教師」という所でふと目が止まる。
それは経験豊富な講師が会社選びのポイントを教えてくれるという内容だった。
就職活動に行き詰まり、藁をもすがる思いだった僕は、小一時間悩んだあげく「会社選びの家庭教師」をクリックしていた。
何を隠そう、プロフィールに載っていた講師の写真が清楚で綺麗な女性だったというのも、応募した理由の一つだ。
女っ気のないこの部屋に、こんな綺麗な人がきてもらえると思うだけでもテンションが上がるというものだ。
しかし、どうだろう。今、僕の自宅にいる女性はあのサイトに載っていた女性の面影はあるものの、写真から想像していた人とは性格が全く異なる。こんなにずぅずぃしい女性だとは思ってもいなかった。
「いいかしら?」
僕の1週間前の回想にしびれをきらしたように女が言った。
「講義を始めてもいいかしら?」
再度、確認するような問いかけに、
「あ、はい。よろしくお願いします。」
と僕は答えていた。
ここにきて「見た目と性格が違うから今日の講義はなしにしてください」なんて言えない。
しかたなく、僕は講義を受けることにした。
「じゃあ、まず、自己紹介からさせて頂くわね。」
そういって姿勢を正すと、女は真面目な顔つきで僕を見た。
さっきまでふざけていた時とはあまりにも違う雰囲気で、なんだか急に緊張してきた。
「サムライ企業研究 特別講師の安室七美恵(アムロ ナナミエ)と申します。この度は会社選びの家庭教師にお申し込み頂き、ありがとうございます。」
そういうと、安室は丁寧におじきをして、僕に名刺を手渡した。
次に、安室は自分がここにきた理由について話し始めた。普段は別の仕事をしているのだけど、休日や空いた時間には、今日の様に就職活動生に対して、企業研究のやり方を教えているとのことだ。
そして、ふいに「私もよ。」とつぶやいた。
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