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有価証券報告書情報を使った企業研究まとめ|就活生・転職者の企業研究

新聞業界の企業研究

      2014/12/22

昨今、何かと話題の新聞業界。

 

主要な新聞社のうち、朝日新聞社と毎日新聞グループホールディングスは上場会社ではありませんが、有価証券報告書を毎年提出しています(読売新聞や産経新聞は有価証券報告書を提出していません)。

 

そこで、新聞業界を代表する上記2社の有価証券報告書を就活という観点から比較してみました。

 

尚、下記情報はいずれも朝日新聞社、及び毎日新聞グループホールディングスの2014年3月期の有価証券報告書より抜粋しています(従って、朝日新聞については一連の騒動前の時点のものです)。

 

新聞業界の給料比較 [高給の噂は本当か?]

まずは、朝日新聞社と毎日新聞グループホールディングスの平均年間給料を見てみましょう。

 

  • 有価証券報告書から平均年間給与を見ると朝日新聞社が約13百万円(平均年齢43才)に対し、毎日新聞グループホールディングス社(平均年齢45才)が約8.6百万円と、朝日新聞社の方が約1.5倍 給料水準が高く、平均年齢も低いことがわかります。

 

  • 朝日新聞社の平均年間給料は、東洋経済の[最新版!「40歳年収が高い会社」トップ300]と比較して、とても高い水準にあり、仮に年間平均給与が40歳時の年収だとすると三井物産を上回る第11位の年収になります。

 

 

  • 通常は持株会社の方が事業会社よりも平均年間給料が高くなりますが、朝日新聞の年間平均給料は毎日新聞グループホールディングスの持株会社の年間平均給料と比較しても、上回っているということになります。

 

新聞業界の退職金比較 [退職金が高いって本当?]

  • 両社とも確定給付型退職金制度を設けており、朝日新聞社及び毎日新聞グループホールディングスの一部の子会社は企業年金制度を採用しています。

 

  • 退職金制度の概要は「有価証券報告書から給料・退職金を調べる方法」でも解説している通り、有価証券報告書の第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表の注記事項に記載されています。以下に抜粋を載せておきます。

1.朝日新聞社 退職給付制度の概要

1. 採用している退職給付制度の概要

当社及び国内連結子会社は、確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度、退職一時金制度及び自社年金制度を設けている。また、従業員の退職等に際して、割増退職金を支払う場合がある。

なお、当社の退職給付制度の一部及び連結子会社が有する確定給付企業年金制度及び退職一時金制度は、簡便法により退職給付に係る負債及び退職給付費用を計算している。

 

2.毎日新聞グループホールディングス退職給付制度の概要

1.採用している退職給付制度の概要

当社及び連結子会社は、確定給付型の制度として退職一時金制度を設けているほか、連結子会社のうち一部は企業年金制度を設けています。一部の連結子会社が有する確定給付企業年金制度及び退職一時金制度は、簡便法により退職給付に係る負債及び退職給付費用を計算しています。また、従業員の退職等に際して割増退職金を支払う場合があります。

 

  • 退職金の費用を年間いくら計上しているかについては、有価証券報告書上に記載があります。この金額を従業員数を割ることで、一人当たりの(連結)年間退職給付費用を算出することができます。
企業名連結退職給付費用[百万円]連結従業員数1人当たり退職給付費用[万円]
朝日新聞社10,9537,726141
毎日新聞
グループホールディングス
2,7935,62449
  • この結果、一人当たり年間退職給付費用は、朝日新聞社が毎日新聞グループホールディングスの約2.8倍であることがわかります。

 

新聞は儲かる?朝日新聞社と毎日新聞グループの収益構造、事業内容検証

朝日新聞社、毎日新聞グループホールディングは共に、事業内容として、「新聞、雑誌等の出版事業」と「不動産事業」を展開しています。

 

1.新聞、雑誌等の出版事業の比較

  • 朝日新聞社の売上高が4,381億円であるのに対し、毎日新聞グループホールディングスは2,248億円と、朝日新聞社は毎日新聞グループホールディングスの約2倍の規模です。

 

  • 利益面では朝日新聞社が65億円で利益率1.5%と僅かながら黒字であるのに対し、毎日新聞グループホールディングスは利益が△8百万円の赤字です。

 

  • 朝日新聞社、毎日新聞グループホールディングスの「新聞、雑誌等の出版事業」売上高は前期から減収(1~2%)しており、利益面では朝日新聞社が約23%の減益を記録する一方、毎日新聞グループホールディングスは売上原価の節減により約7億円の増益となっています。

 

  • 両社とも、(業績等の概要)において、近年の新聞業界は厳しい状況にあると記載しており、成長分野として電子分野に期待をかけているようです。

①朝日新聞社 2014年3月期 有価証券報告書 業績等の概要 より抜粋、加工

若年層を中心とした無読者層の拡大は続いており、メディア構造の急激な変化、購読層の高齢化など、新聞経営は引き続き厳しい状況に直面している。

13年5月に「未来メディアプロジェクト」をスタート。13年6月には新規事業開発に専従する実験的な組織としてメディアラボを設立した。激変する環境に即応し、既成概念にとらわれず、新しいメディアやサービスを生み出すことを目指している。デジタル分野では、有料配信の電子新聞「朝日新聞デジタル」の有料会員数が14年3月末時点で12万8千人に達した。また、13年5月に開設した全米有数のニュースサイト「ザ・ハフィントン・ポスト」の日本版は、サイトの訪問者数を14年3月時点で800万人台まで伸ばした。

 

②毎日新聞グループホールディングス 2014年3月期 有価証券報告書 業績等の概要 より抜粋、加工

新聞業界は若年層の活字離れが一層進み、相変わらずの苦戦を強いられる状況が続きました。一方でIT技術を駆使した電子紙面の導入などにより、新たな道を模索する姿も顕著になってきました。

電通の調査によると総広告費が持続的な景気回復傾向、消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要などを背景に2年連続で前年を上回る中、2013年の新聞広告費は、前年から1.2%減の6,170億円にとどまるなど、新聞業界を取り巻く環境は依然として厳しいと言わざるを得ません。また、朝刊発行部数は日本新聞協会調査で、前年を77万部下回る4,700万部でした。世帯当たり部数は0.86部で、前年比0.02部減と、減少傾向が続いています。

 

 

2.不動産事業の比較

  • 不動産事業に関しては、同社とも同規模の売上高(朝日新聞社:185億、毎日新聞ホールディングス138億)があり、また、利益も同程度計上しています(朝日新聞社:27億、毎日新聞ホールディングス25億)。
  • 朝日新聞社は有楽町センタービル、有楽町駅前ビル(イトシア)等を保有しており、大阪市北区の中之島プロジェクトに総額509億円を投資予定です(平成29年春完成予定)。
  • 不動産事業等の利益は、朝日新聞社が全体利益の約30%, 毎日新聞ホールディングスではほぼ100%を占めており、両社ともこの事業の利益に依存する部分は大きいです。特に、毎日新聞ホールディングスは、新聞、雑誌等の出版事業による赤字を不動産事業等で補っています。
  • ただし、両社とも「不動産事業等」に属する従業員の比率は非常に少ないため、この事業を希望して新聞社に就活するのはやめておいた方がいいと思います。

 

新聞会社の安定性比較

  • 平成26年3月期の(連結)自己資本比率は朝日新聞社が約56%であるのに対し、毎日グループホールディングスは約19%であり、朝日新聞社が約3倍上回っています。
  • 連結営業キャッシュ・フローで比較しても、朝日新聞社が212億円であるのに対し、毎日新聞グループホールディングスは94億円であり、朝日新聞社は毎日新聞グループホールディングスの2倍以上の営業キャッシュを獲得しています。
  • 上記より、安定性は朝日新聞社の方が毎日新聞グループホールディングスよりも高いといえますが、現状、両社とも安定性に関する問題はなさそうです。しかし、新聞、雑誌等の出版事業で両社とも減収、朝日新聞は減益となっていることから、不動産事業の利益で補えないほど、出版事業の業績が悪化した場合にはリストラ等が懸念されます。
  • 朝日新聞社は中之島プロジェクトに今後、約500億円を投資する計画があり、このプロジェクトの成否が今後の安定性にも多少影響してきそうです。

 

新聞業界が抱えるリスクとは?

  • 両社とも事業等のリスクとして、活字離れ、広告収入の減少、報道内容に対する訴訟を挙げています。
  • 特に朝日新聞では予告されていたかのように、重大な誤報によるリスクを以下の通り掲げていました。

<朝日新聞社 平成26年3月期 有価証券報告書 事業等のリスクより 一部ハイライト加工>

(1) 取材報道

取材報道は日刊新聞を発行する当社の根幹業務であり、重大な誤報や取材手法の逸脱、取材先との癒着などのリスクが顕在化した場合、当社及び本紙に対する信用を毀損し、業績に影響を及ぼす可能性がある。当社では、記者教育の機関として「ジャーナリスト学校」を設けて新人記者の研修や記者行動規範の徹底を行うなど、リスク顕在化の予防に努めている。また、報道による名誉棄損、プライバシー侵害、差別などの人権問題が生じるリスクが顕在化した場合も、同様の影響が生じる可能性がある。国民の知る権利に奉仕する報道の自由を守ると同時に、報道による権利侵害事案の救済を図るため、当社は第三者機関として「報道と人権委員会」を設立、社外委員による調査と審理を通じて再発防止にも取り組んでいる。これらのリスクは、情報発信を生業とする当社グループ全体に関わるものであり、当社を中心にグループ全体でリスク顕在化の予防に努めていく。

 

  • 毎日新聞グループホールディングスでは若者の活字離れを下記の通り挙げておりますが、個人的にはスマホ等でニュース記事を読む機会が増え、むしろ若者は活字に接する機会が増えているのではないかと思います。

<毎日新聞グループホールディングス 平成26年3月期 有価証券報告書 事業等のリスクより>

(2) 若年層の活字離れについて

国内の少子高齢化と本格的なIT時代の到来から、若年層を中心とした活字離れが一層進展する可能性が見受けられるので、難解なニュースをわかりやすく報道することに努めるほか、社内でCS(顧客満足度)向上の研究に努めますが、販売収入が減少し当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

新聞会社の役員になるには?報酬は?

  • 両社とも取締役になっているのは新卒から入社して取締役まで上り詰めた、叩き上げの人がほとんどです。逆に言うと、現状では中途入社の人が取締役になるのは難しそうです。
  • 朝日新聞社は昭和50年代後半、毎日新聞グループホールディングスは昭和40年代後半に入社した人が取締役になっています。つまり、前者は入社してから取締役になるまで約30年、後者は約40年かかっています。
  • 取締役の平均報酬はそれぞれ下記で計算されます。朝日新聞社の役員報酬は毎日新聞グループホールディングスの約2倍です。

1.朝日新聞社 1人当たり役員報酬

取締役の年間役員報酬 367百万円 ÷ 12名 = 約30百万円

2.毎日新聞グループホールディングス1人当たり役員報酬

取締役(社内)の年間役員報酬 143百万円 ÷ 10名 = 約14百万円

 

 

新聞会社の株主はどんな人?

  • 朝日新聞社の株主の約67%が個人でそれ以外は法人が株主となっています。
  • 毎日新聞グループホールディングスの約56%は法人で、個人が24%、金融機関は17%が株主となっています。主要株主から推測するに、法人株主は持ち合い株式と考えられます。
  • 両社とも会社に影響を与える様な大株主は存在せず、筆頭株主(持株比率10%~20%)は従業員持株会です。

 

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