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企業研究物語: ⑨アイドルオタク

      2014/12/27

東京青山にあるカフェ『サンタフェ』の片隅。

 

ケミカルウォッシュジーンズにギンガムチェックのシャツを着た男は、時おり怪訝な顔を覗かせる周りの視線も気にせず、熱心に語り続けている。頭には大きな赤い柄のバンダナを巻き、顔からはみ出すほどの薄い金属フレームメガネをかけた男は、洗練された男女が集うおしゃれカフェ『サンタフェ』では完全に浮いた存在だ。

 

イラストbyそまりさん

イラストbyそまりさん

 

男の熱心なアイドル話に、先程から仕方なく付き合っている自分も、周りから同じ部類の人物とみなされているに違いない。就職浪人となってから、周りの冷たい視線には慣れているはずなのに、ここで受ける視線は全くの異次元だ。

 

「お一人様来店です。」

 

店員の声が来客を告げる。祈る様な気持ちで、視線を来客に向けると、白いブラウスとタイトスカートという出で立ちで彼女はやってきた。

 

「お待たせしちゃったかしら?」

 

席について、持ってきたカバンを横の椅子に置くと、アイドルおたくと自分の向いに彼女は腰かけた。

 

「この人が遼太君のお友達?」

 

安室は運ばれてきたアイスコーヒーに、ミルクとガムシロップを2つずついれ、ストローで氷と共にくるくる回しながら聞いた。

 

「友達というか、まぁ、はい」

 

コテコテのアイドルおたくと、友達だと思われたくない気持ちから、僕は少し濁して答えた。

 

「田宮好三っす。」

 

アイドルおたくはそう答えて軽く会釈する。

 

極度の人見知りなのか、女性を前にしてあがっているのか、安室の顔を全くみようともしない。

 

安室はそれを気にする様子もなく。

 

「そう。じゃあ、早速だけど、ヨクブーを見せてもらえるかしら?」

 

その言葉を聞くやいなや、田宮はウェストポーチをごそごそとやり、ヨクブーを取り出して安室に見せた。

 

そのヨクブーには、給料面と経済的安定性のみ5点がつけられており、残りは全て1点となっていた。典型的な給料・安定重視タイプである。

 

田宮のヨクブー

給料の高さ安定性有名度裁量権好きな仕事
55111

 

「僕はアイドルにお金をかけたいので、好きな仕事を見つけるとか、スキルアップとかに全く興味はないんです。ただ、アイドルグッズを買うために十分な収入が安定してもらえれば仕事はどんなにつまらなくてもいいんです。」

 

鼻息荒く、田宮は力説しながら安室に向かって話しかけた。

 

「そう。ところで、あなたはどんなアイドルが好きなの?」

 

安室が問いかけると、

 

「『スカンクフィッシュ在学中』の『ぷーりん』推しです。」

 

田宮はやや食い気味に答えた。

 

自分は、『スカンクフィッシュ在学中』というアイドルグループも、ましてや『ぷーりん』というアイドルも、全く聞いたことがない。

 

「あ〜、あの子ね。確かにちょっと、かわいいわね。でも、『ピーちゃん』の方がかわいくな〜い?」

 

安室が再び、田宮に問いかける。

どうやら、安室も『スカ中』の事を知っているようだ。

 

「いやいや、見た目だけで判断するなんてアイドルファンとはいえませんね。『ぷーりん』は『スカンクフィッシュ在学中』略して『スカ中』最年少なのに、MC担当をしたりすごく頑張っているんですよ。それにアイドルなのに、手汗がすごいとか公言していて、ファンに対しサービス精神が旺盛なんです。僕は『スカ中』が今みたいに、有名になるずっと前から知っているんですからね!」

 

田宮は興奮しながら安室に返答した。

 

「あら、よく知っているじゃない。じゃあ、『スカ中』の『ピーちゃん』が、昔、全日本フィギュアスケートのジュニア大会で2位をとった事もご存知かしら?」

 

安室も田宮に負けじと『スカ中』知識を披露する。

こうして、スカ中オタク2人による大バトルが始まった。場所はあろうことか青山にあるオシャレなカフェ。周りの視線が痛すぎる。田宮はぷーりん推し、安室は『ピーちゃん』推しのため、どちらも推しメンバー情報をこれでもかとさらけ出していた。

 

死闘とも呼べる壮絶なバトルは互いに一歩も譲らず、均衡状態を保ったまま、開始から30分を超えていた。それでも、決着がつかず、互いの知力、体力、時の運を使い果たしたところで、引き分けのままこの長い戦いは終結を迎えようとしていた。

 

戦いの終わりが見えたところで、僕が間に入った。

そして3人がこうして集まった目的を改めて説明した。それは決してスカ中知識を披露し合うためではなく、田宮のヨクブーから、最適な会社を探すためのアドバイスを安室から受けるためだという事を。こうして、ようやく本題に入ることができた。

 

「ところで、田宮君、あなたはスカ中の様な深い研究を就職活動でも行っているかしら?」

 

一息置いたところで、安室が田宮に話しかけた。

 - 企業研究物語

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