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企業研究物語: ⑤逆襲

      2014/12/18

「シクッ、、、、、シクッ、、、、、、ウッ、、ウッ、、、、」

 

嗚咽を鳴らし、両手で顔を覆いながら、安室は突然泣き始めた。しゃくりあげるのと、同時に肩がビクビク動いている。

 

「リョウタのバカ、、、、、本当ひどいよ、、、、、」

 

そう言った、安室は下向いて顔を抑えたままだ。

 

「ご、、、ごめん、、、なさい。」

 

女性の涙を前に、僕は動揺してとっさに謝った。

 

僕の何気ない一言に反応して、すぐに泣いてしまう。そんな乙女の一面を安室は持っていたのだ。相手の事を思いやり、発言には少し気をつけるべきだったのかもしれない。

 

「本当に、、、、ごめん。」

 

そう言って、涙を拭くためのティッシュ箱を片手に持った。
そこから、ティッシュを2、3枚とりだし、顔を抑えている安室の手をやさしく振りほどこうとした時だった。

 

「バァーーーーーーッ!」

 

安室が顔をあげた。目と口を見開き、舌を思いっきりだした変顔をこちらに向けている。無論、その目からは、涙など一滴も流れていない。

 

安室のウソ泣き芝居に僕はまんまと騙されたのだ。

 

「今の言葉、あんたにそっくりそのまま返すわ!」

 

指をビシッとこちらに向けている。まるでゲーム「逆転裁判」の主人公の様なポーズだ。あまりの出来事に、僕は何がなんだかわからなくなり、6畳一間のアパートで思わず叫んでいた。

 

「サンチュウゥーーーーーーーーーーーーーーーーファィッ!!」

 

中学の時、ハンドボールの部活で主将を努めていた時のかけ声だ。人気がなかった部活で、3年生は自分一人だけ。それを理由に主将に選ばれていた。僕はそのかけ声と共にランニングの先頭を走り、後輩達はこのかけ声に「ファイッツゥーーー!ファイッツ!」と定期的リズムで返してくる。

 

僕が一番輝いていた時の思い出だ。

 

その掛け声を今でも無意識に出してしまう。どうしようもなく、自分を鼓舞する必要がある時や窮地に陥った時に。

 

すなわち、今、この瞬間だ。

 

 

「あなたが、私の結婚相手選びに対して言ったアドバイスを、そっくりそのままあなたの会社選びへのアドバイスとして返すって言っているのよ。」

 

安室はまだ、逆転裁判をつづけている。

 

「はっ?」

 

何のことか未だにわかっていない。部活の掛け声をだしても頭の中はまだ、パニックのままだ。

 

「もぅ、だから、あなたの会社選びも同じだって言っているわけ。就職浪人しているのに、まだ、有名企業や大企業のみに絞って就職活動しているじゃない?」

 

「い、、、いやっ、そんなつもりじゃ。。。。。」

 

突然の安室の攻撃に僕は反論できなかった。

 

「図星でしょ。そんなんじゃ、一生たっても就職できないわよ。そんな条件あきらめて、少しでも興味のある会社があったら、どんどん面接して、少しでも経験積んだ方がいいわよ。それに、、、あなたが、有名企業や大企業を選んでいるのは、あなた自身というよりは、親や友人にいい報告がしたいからじゃないかしら?」

 

僕は安室に完全にはめられたのだ。安室は、婚活の悩みを相談するふりをして、逆に僕に就職活動の問題点をわからせようとしたのだ。

 

「僕を騙したんですねっ」

 

泣ける。今なら悔しいあまり、泣けてしまう。いい大人なのに、すぐに泣ける。だが、ここで泣いてはいかんのだ。泣いたら、安室に馬鹿にされるだけだ。涙をぐっとこらえ、安室を睨みつけた。先程、安室に同情していた気持ちをそっくりそのまま返して欲しい。

 

「騙した訳じゃないわよ。私も本当に婚活に悩んでいるもの。でも、あなたが私にしてくれたアドバイスがそっくりそのままあなたにあてはまるから、失礼だとは思ったけど、おかしくなってつい言っちゃったーー。」

 

顔をニタニタさせながら、安室は仁王立ちの姿勢で腕を組み、自分を見下ろす様に言った。

 

きっと、こやつは悪魔の手下に違いない。これからはサタン安室と呼ぼう。あのでかい胸の中身は脂肪ではなく、世界中の妬み、憎しみ、怒りがつまっているのだ。

 - 企業研究物語

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