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企業研究物語: ⑯有名な会社を選ぶ 前編

      2014/12/28

池袋駅東口から、サンシャイン60通りを通り、首都高速5号池袋線高架下を抜けると、そこは腐女子の聖地だった。

通称、乙女ロードと呼ばれるこの一帯は、同人誌やBLを中心とした漫画とグッズであふれかえっている。

安室と僕は、この一帯にあるカフェを探して歩いていた。

僕の数少ない女友達であり、今回のサムライ企業研究に協力してくれる、上河原 唯とカフェで待ち合わせをしているのだが、目的の場所が見つからない。

iPhoneのグーグルマップを頼りに辿ると、そこは民家となってしまい、周辺にもカフェらしきものはみえない。

10分程、民家の周りを歩き回った後、僕と安室は、再度、グーグルマップが示す場所へと戻った。

すると、そこに背丈の小さな少女が立っていた。

遠目にも、それが上河原唯であることがわかった。

 

「ごめん、遅れちゃった」

 

僕が、待ち合わせより10分以上遅れた事を詫びると、

 

「場所がわかりずらかったかと思って、玄関の前で待っていたの」

 

イラストbyそまりさん

イラストbyそまりさん

 

唯はそう言って、先ほどの民家の中に我々を案内した。

よく見ると、玄関の横に小さな文字で「喫茶  Decay Girl」と書かれた看板がでていた。

最初に辿り着いた民家が、目的としていた喫茶店だったのだ。

 

店に入ると、そこは美男子2人組の漫画のポスターが張り巡らされており、店内にある漫画も全て美男子ものだった。聞けば、BL(ボーイズラブ)と呼ばれる分野の漫画をモチーフとした喫茶店だそうで、唯は喫茶店と言えば、このお店しか行ったことがないとのことだった。

 

またも、場違いな場所に来てしまったと思いながらも、4人席に案内され、そこで3人とも店のお勧めのロイヤルミルクティーを注文した。さすがの安室も普段は見られない光景に、やや戸惑っているようである。

 

しばらくして、ミルクティーが運ばれてくると、唯は唐突に話し始めた。

 

「私、このままじゃ駄目だと思うんです。」

 

うつむきがちな顔から覗く目がどこか動揺していて、顔もやや引きつっている。

緊張しながらも、ただならぬ決心で話をしようとしている事が見て取れる。

 

「大学在学中も親の仕送りに頼って自分の好きな事ばかりしてきたんです。」

 

「好きな事って、この漫画とかそういう事?」

 

僕が聞き返すと、

 

「そうです。大学で授業がある時以外は、漫画やネットに没頭してしまって、、、、それ以外、何もしてこなかったんです。他の学生と同じ様に、就職活動したりとか、バイトやサークル、そういう事を一切せずに、漫画の世界にばかり没頭してきてしまったんです。」

 

あまりの突然の告白に、僕も安室も一言も発する事ができず、呆然としていると、

 

「だから、だから、、、その、、、、自分を変えたいんです!」

 

唯はそう言い切ると、目の前のロイヤルミルクティーをぐいっと飲み込んだ。

思いのほか熱かったのか、液体が喉元を通過するまでその熱さに耐えようと、言いようもない顔になっていた。

 

「あの、、、あのねーー。」

 

あっけにとられていた安室がようやく喋り始めた。

 

「私は自己開発セミナーをやっている訳ではないのよ!だから、あなたが、『自分を変えたい』願望を持っているのなら、別の人にあたってくれない?」

 

そう言って、席を立ちかけた。

 

僕は安室を慌てて制しながら、唯に話しかけた。

 

「唯ちゃん、今、『自分を変えたい』と言っていたけど、ど、どの様に変わりたいと思っているのかな?」

 

唯は、とりあえず安室がすぐに帰らなかった事にほっとした表情を浮かべながら、意を決した様に話し始めた。

 

「私は、私は、、、、、これまで親の仕送りで好きな事をしてきたから、親の望む会社に就職できるようになりたんです。」

 

そう言うと、泣きそうになりながら、うつむいた。

 

「親の望む会社って、どういう所?」

 

僕が聞き返すと、

 

「それが、、、それが、、、、」

 

「それが?」

 

「わからないんです」

 

「はぁ?何行ってんのこの子」

 

安室は大声でそう言うと、ダンッと机を叩いて立ち上がった。周りの客の視線が一気に集まる。

 

「ま、待って下さい。」

 

再び僕が安室を制すと、

 

「わからないって、どういう事?」

 

と唯に聞き返した。

 

「実は親が私にどの様な会社に入って欲しいと思っているのか、わからないんです。」

 

そう言って、うつむくとついに泣き出してしまった。

 

「ヒクッ、ヒクッ、でも、、でも、、、」

 

唯はしゃくりあげながらも、何かを言おうとしていた。

 - 企業研究物語

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