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企業研究物語: ⑥トイレの攻防

      2014/12/18

「フヌゥーーーーーーーーーーッ!」

 

僕は脳ミソにたまったイガイガを一気に吹き出すように息を吐くと、いてもたってもいられなくなった。頭の中が混乱し、あろうことか自分の家のトイレに立て籠もってしまった。悔しさと恥ずかしさと心苦しさの中でのとっさの行動だった。こんな感情、一体いつ以来だろうか。中学生の頃、クラスのマドンナに告白し、当たり前の様にふられた瞬間を、同じクラスの女子に見られていた時以来だ。

 

ただ、確かに安室の指摘は、今の自分の状況を的確に表していた。就職活動をするまでは自分をエリートだと思っていたし、中学校では、学年で成績トップだったこともある。高校も進学校だったし、大学も誰もが知っている有名大学だ。だから、就職も有名企業に入れると思っていた。むしろ、ここまで頑張って有名大学に入ったのだから、有名企業に入らなければ意味がないとさえ思っていた。

 

それに、有名企業に入らないと、大学に入るための塾代や大学の授業料を払ってくれた親に、なんとなく申し訳ない。高校時代に勉強しなかったせいで2流大学しか受からなかったクラスメートと同じ会社に入って、同じ給料をもらうなんてまっぴらごめんだ。そんな思いで、就職雑誌で毎年発表される人気企業ランキングを見ていた。それは、偏差値の高い大学から順に並べられたリストの様に思えた。高校、大学と受験を勝ち抜いてきた僕にとって、就職活動も同じ様に努力すれば、必ずや有名企業に入れるに違いない。

 

そんな僕の思いは、昨年の一年間の就職活動のすえ、果てなく裏切られたのだった。

 

就職活動は受験勉強と違い、何に向かって努力していけばいいのかわからない。大学時代に真面目に講義を受けて「優」をたくさんとった人、業界研究や自己分析を必死になって頑張った人よりも、サークルや部活で思いっきりキャンパスライフを堪能した人が、あっさり有名企業の内定を勝ち取ったりする。努力が結果に結びつかない、そんな現実を見せられて、僕は一体どうすればいいのか、半ばふてくされていた。

 

でも、今年は自分の考え方を変えなければいけない。そうでなければ、うまくいかなかった昨年の就職活動から、何も学んでいないことになる。今年は、有名企業ではないところも受けよう。もっと多くの会社の事を調べて、自分にあった所を探していくべきだ。そう考えると、安室の言うことはもっともなのだ。僕が安室に対して行った婚活アドバイスは、自分の就活状況を客観的に見ることができるいいキッカケとなる。

 

自分で思い描いていたエリート路線から外れてしまうのは少し怖いが、これからは新たな一歩を踏み出すしかない。

 

そう思って、自室のトイレから外に出ようとした時だった。

 

「ドンドンドン!ドンドンドン!」

 

安室がトイレのドアをノックしてきた。

 

「開けてよ〜!ごめんったら〜!あやまるからさぁ〜!開けてよ〜!」

 

安室が突如あやまってきた。

この変わり身の早さはなんなんだ。

 

「また、おトイレに行きたくなったのよ~。だから、早く開けてよ~!」

 

ついさっき、トイレで用を足したばかりじゃないか?

一体、安室の膀胱キャパはどうなっているのか。そんな疑問を抱きつつ、僕はトイレのドアを開けた。

安室は入れ替わるようにして、僕を押しのけてトイレに入っていく。

 

「ジャーッ!」

 

フラッシュ音と共に、トイレから出てきた安室はすっきりした顔で、まるで何もなかったかの様に「講義を再開するわよ。」と言った。

 

そして、一枚の紙を取り出した。

 - 企業研究物語

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